音階を音の階段と考えると、曲を構成している段数と階段の形によって、長調や短調・日本風アラビア風等と感じることになるわけであるが、ここでは、西洋音楽の音階や音律について考える。
聞いている人が、心地よいと感じるメロディーや和音の響きは、人によって時代によって地域によって微妙に変化するが、音は物理的に鳴るので、発せられる振動数が重要な要素になる。
振動数が2倍になるとオクターブ上の音になり、3/2倍になると完全5度になり、同時に鳴った時にハモッたと感じられる。
ピタゴラスの音階
あのピタゴラスが、完全5度の振動数が、2:3になることを基本原理として、数理的に音階を作った。
例えば、・ドから数えて5番目の音・ソを決める。その・ソから完全5度の音・・レが決まる。・・レをオクターブ下げて、・レを決める。・レから5度上の・ラを決め、・ラから5度上の・・ミを決め、オクターブ下げて、・ミを。これを繰り返すと、・ドから・・ドまでのドレミファソラシドの音階ができる。
中間全音階
それまで悪魔の響きとして、嫌われていた3度の響きも、13.14世紀になると音楽に対する欲求や好みが多様になり、3度や6度の音程が多用されだす。こうなると、ピタゴラスの音階では、様々な不都合が生じてくる。
そこで、試みられたのが中間律であるが、詳しくは専門家に任せることにする。
十二平均律
バロック時代になり、一曲の中で調性が変わる転調が行われるようになると、中間律で調律された鍵盤楽器では不都合が生じるので、一オクターブを12で均等割りをし、一つを半音とした12平均律が現れる。これが、鍵盤楽器に現在まで使用されている12平均律である。例えば、ファ#とソbが違う音なのに、同じ音として扱われることとなる。
12平均律の功罪
○全部の調性や転調に対応できるので、鍵盤楽器には都合が良い。
●3.6.7度に、特に不都合(長調のミ・ラ・シが高い)が生ずる。
純正律
現在、鍵盤楽器以外で使用されている和音の響きが妥当とされる音階。振動数比が整数のもの。
<比較表>
ド レ ミ ファ ソ ラ シ ド
○振動数比
・純正律 1 9/8 5/4 4/3 3/2 5/3 15/8 2
○セント数
・純正律 0 204 386 498 702 884 1088 1200
・12平均律 0 200 400 500 700 900 1100 1200
・ピタゴラス 0 408 906 1110 1200
*
セントとは、半音を100セントとして、一オクターブを1200セントとしたもの
<比較表からわかること>
@12平均律は、純正律に比べ、長調では他に比べて
ミと
ラと
シがかなり高いこと。
ミは、+14セント ラは、+16セント シは、+12セント
Aドミソの和音で、響きを決める重要な3音ミを、かなり低めにとる必要があること。
A音 標準ピッチ
1859年 A(ラ)音が、フランスで 435サイクルと決められた
1939年 A(ラ)音が、標準440サイクルと決められた
J.S.バッハ頃から現在まで、約半音上昇
現在は、各オーケストラ毎様々なA音が使われている。最も多いのは、442サイクルであろうか。
以上のように、鍵盤楽器の12平均律(ピアノは高音と低音に微妙なカーブが採用されている)と、
純正律のことを念頭に入れておくことが、合唱・合奏の指導には必要と思われる。
2つの響きの違いを体感するには、それぞれの調で純正律の音を出せるヤマハのハーモニー
ディレクターが有効と思われる。